052-443-5533

明日ぞ来るらむ

明日ぞ来るらむ

2020年4月20日

新型コロナウイルスでなんだか暗い世の中が続きますね。

先のブログで述べました通り、当院は考えられ得る万全の対策を取っていきたいと考えています。万全とはなんぞやという点については適宜見直しを要しますので、来院いただく度に対応が変わっているかもしれませんが、何卒ご容赦下さい。

 

さて。

私は医師国家資格を持つ「お医者さん」ですが、博士号を持つ科学者でもあります。医は仁術と言われますが、それは確かにその通りだとしても、医師は常に科学者であらねばならないと言うのが私の信念でもあります。今回は新型コロナ肺炎について少し理系にお話したいと思います。

 

新型コロナ肺炎はウイルスによって引き起こされる「感染症」です。感染症は患者さんから他の健常な方に感染を広げる性質があります。いわゆる「うつる」と言うヤツです。感染症は種類によって「うつる」強さが違う訳ですが、ざっくりと「1人の患者さんが何人の人にうつすか」と言う数字で考えます。これを「基本再生産数」と言います。

例えば麻疹。基本再生産数は15くらいとされています。風疹は7くらい。結核は5くらい。インフルエンザは23だそうです。では今回の新型コロナはと言うと、インフルエンザと同程度の23と見込まれるそうです。「なーんだインフルと同じかぁ」と油断するなかれ。1人の患者から12人にうつるとしますでしょ。翌日は2人からそれぞれ2人ずつうつるから2×24人。翌々日は4人から2人ずつうつるから2×2×28人、その次は2×2×2×216…1週間で128人、2週間でなんと16,384人です。こう言う増え方を「指数関数」と言うんですが、とにかくとんでもない増え方なんです。

 

「基本再生産数」は「菌の感染力×接触回数×病気の期間」と計算されます。菌の固有の感染力はどうしようもない訳ですし、有効なお薬がない現状では病気の期間もどうにもなりません。ですから、接触回数を減らして基本再生産数を下げましょうと言うのが、外出自粛の狙いと言えます。

 

で、その効果なんですけどね。

効果は出てると思いますよ。

先にお話した通り、指数関数って今日が8なら明日は16、明後日は32…とどんどんどんどん増えていくもんなので、今日の新規患者さんが20なら明日の新規患者さんは40ってことなんです。でも今日の新規患者さんが20で明日の新規患者さんも20なら1人から1人にしかうつってないってことですから、基本再生産数は1。これなら指数関数ではなく、単なる正比例と言うことになります。

 

そのつもりで愛知県の患者数のグラフを見ますと

 

 いったん収まったかに見えた新規患者数が42日あたりを境に急に増えて、49日あたりをピークに横ばいになってますでしょ。では、この時に何が起こったか?と言いますと、東京に非常事態宣言が出されるだろうと噂になった時(実際に出されたのは47日ですが)と愛知県独自で非常事態宣言した時(410日)なんですよ。

指数関数のグラフって

 

 

こんな感じですからね。

最初指数関数的に増え始めたけど、みんなが少し気をつけたから少し収まって、そのあと東京からの流入で一気に増えて、また指数関数的に伸びようとしたところで、愛知県の非常事態宣言で再び横ばいになったように見えるんです。

だから、今みんなで頑張ってることに効果は出てるってことになります。

 

今、新型コロナ感染症で治療されている方たちが何週間で治癒するのかは分かりませんが、死んでしまわない限り、イギリスのジョンソン首相の様に治って社会に復帰する訳ですから、すこーしずつすこーしずつ新型コロナウイルスに対する免疫を持った人が増えてくることになります。だから、基本再生産数を1に維持できればすこーしずつすこーしずつ収束に向かうことになります。後はどれだけ時間がかかるかという問題だけです。

 

とは言うものの、その時間の間に国民全体が生きていけないほど経済的に困窮してしまっては困りますから、基本再生産数を1に維持できる範囲で少しずつ経済活動を再開すると言うのが今後のテーマになっていくのかなぁと思っています。

もちろん、その間に他の病気で死んじゃっては元も子もないですから、きっちりと感染対策を取られている病院であれば、これまで通り基礎疾患の治療をしっかりと続けることが大切です。

新型コロナ肺炎を克服した日本の姿、見たくないですか? 私は見たいです。いつの日か、支えてくれたスタッフと、通い続けてくれた患者さんと、みんなで祝杯をあげたいです。

だから今こそ知恵を絞って頑張ります。

 

先日はリハビリ病院でのお仕事でした。いつもの通勤路以外に足を向けるのは久しぶりでした。

暗い話題の中、今年の桜は終わってしまいましたが、病院前の道路に躑躅(ツツジ)が咲いていました。これからいろんな花が咲いて日本の最も美しい季節になりますね。

日本人は結核と言う恐るべき感染症を乗り越えてきた民族です。必ず明日は来ますよ。

みなさん。頑張りましょうね。

 

花散れど 世に花は咲く 躑躅咲く 牡丹も藤も 明日ぞ来るらむ

(大伴ヤキモチ)

 

  • 脳神経外科
  • 内科・神経内科
  • 採用情報
  • 脳神経外科のぞみクリニックBLOG