明けましておめでとうございます。
皆さまお正月はどのように過ごされましたか？
私は新型コロナウイルスの感染爆発地域の1つである名古屋市の住民ですから、比較的感染者の少ない三重県（注1）に里帰りするのもなぁと思い自宅で寝正月で過ごしました。
…と言っても、ザ・カウチポテトの私にとっては（注2）、どこで寝てるかと言うお話であって、毎年寝正月なんですけどね。
昨年末からの新型コロナウイルスの広がりは凄まじく、私の古巣である海南病院も年末からずいぶんと苦しめられているようです。
海南病院は地域の基幹病院で感染症指定医療機関ですから、それはもちろん彼等の社会的使命ではあるわけですが、そうは言ってもかつての仲間たちが個人防護服に身を包み最前線で働いていることを思うと、開業医風情が「謹んで新年の賀を述べます」なんてお気楽なことを言うのもちょっと憚るところがあって、今年の年賀状はちょっと渋く作りました。
例年は「謹賀新年」の下に、万葉集から春らしい和歌を一首選んで載せる形式なんですが、今年は「謹賀新年」ではなく、長屋王さんが鑑真さんに贈ったと言う漢詩から「山川異域 風月同天」にしました。「山や川は住んでる所が異なると違うけど、風や月は同じだよね」→「住んでる世界は違っても心は通じ合っているよね」と言う意味あいです。
長屋王さんは奈良時代の政治的リーダーですが、日本に仏教の指導者を招きたいと思い、中国で高名だった鑑真さんに来日を依頼します。その当時の交通手段で中国から日本に来るなんて、現代で言えば月面着陸以上の危険性があったと思われますし、当時の最先端の文明国で既に高名であった方がそんな危険を冒してまでアジア最果ての辺境地に行こうなんて、功成り名遂げて難関大学の教授になった人が未開の地に九九を教えに熱気球で赴任するようなもので、普通はそんなことしようとは思わない訳ですが、長屋王さんから送られたこの漢詩に心動かされ、来日を決意されたとのことです。英雄、英雄を知ると言った風韻を感じますね。
残念ながら、長屋王さんは「長屋王の変」で政敵であった藤原四兄弟の陰謀により自殺に追い込まれ、鑑真さんが散々な苦労の末ようやく来日された時にはこの世にいませんでした。喧嘩両成敗ですから藤原四兄弟には四兄弟なりの正義があったとは思うんですが（注3）、もう少し穏便にやれなかったものかと思いますね。
それはさておき、新年明けたらまた非常事態宣言ですね。
人間と言うサルは学習能力が高すぎて危険にまで慣れてしまうと言う悪い特性を持っていますが、慣れずにしっかり対応しましょうね。
♪一年の 計を思いて 寝て起きて 何も変わらぬ 元旦の朝
（大伴ヤキモチ）
（注1）三重県桑名市です。2019.12.30付「若き日の」の項もご参照ください。
（注2）2020.5.5付「膳を我が家に」の項もご参照下さい。
（注3）その後4人とも次々と死んでしまいました。長屋王さんの怨念だと言われてたらしいので、その当時から無実の陰謀だったと思われてたみたいですね。
