ちょっと前の話なんですが、温泉に行ってきました。
半世紀に及ぶ人生において「貧乏ヒマナシ」と「貧すれば鈍す」ほど自分の人生を象徴する言葉は無いなぁと思う今日この頃ですが、先日ぽかーんと時間が空いてしまった土日があり、思い立って温泉に行ってきました。行き先は奥飛騨温泉です。
久しぶりに高速道路を運転しましたが、実は私は高速道路があまり好きではありません。一般道だと距離感がビミョーな高校生のカップルとか、乳母車に乗せられて散歩する犬とか、自転車のカゴにネギを入れたオシャレな若奥さまとか、色々な「生きる一コマ」を見られて楽しいんですが、高速道路では道路と車しか見えず、ただ道に沿ってアクセルとハンドルを操作してるだけなので。
で、「高速ってつまらんなぁ…」と思いながら運転していたら、車の左側をすーっと看板が流れていきました。「ん?」と思ったその刹那、カーナビくんが「ルートを変更します」と呟くではありませんか。なんと降りるべき飛騨清見インターを通り越してしまっていました。
ありゃーと思ってももはや後の祭り。次のインターで降りて乗り直すしか無い訳ですが、進めど進めど次のインターがやって来ません(注1)。どんなに後悔してもとにかく前へ進むしかない道に「これって人生みたいだよなぁ」と考え込んでしまったその頃、ようやく次の白川郷インターが現れました。
料金所の手前でコーンをずらしてUターン…と邪(よこしま)な心がむくむくと湧いて来たのですが、そこはなんとか自制して料金所に入りました。が、コーンに気が行っちゃってるもんだから間違って現金精算のレーンに入ってしまいました。「乗り越しちゃって心が乱れててこっちに入っちゃいましたぁ」と謝ったら、精算ブースの老紳士「じゃ、引き返してもらう様にしましょうかね」と仰るではありませんか。「ホンマかいな」と半信半疑でしたが、すぐに電話連絡してくれて、「あそこのオバサンのところに行ってください。Uターンしてもらいますから」とのこと。で、その老婦人の手招きする方向へ恐る恐る進んで指示通りUターン。「手続きはしてありますから普通に目的のインターで降りてもらえば大丈夫ですよ〜」と仰るので、そのまま高速に乗って戻りましたが、特に料金の追加もないままなんの違和感もなくインターを降りられました。
余計な遠回りをしちゃったので入浴は夕食後、夜も更けてからになってしまいました。霧雨に煙る(注2)夜の露天風呂で、水面の熱い湯気が高く登っては宵闇に消えていく様は、歳と共に消えていった若き日の熱い志の様に見えてしまいました。
生きる道にもあの老紳士老婦人のような方がいらっしゃって、人生を逆走して若かりし頃の自分のドタマをどついてやれるといいんですがねぇ。
♪漂いて 虚(うつろ)とぞなる 熱き湯気 我青き日の 思いにも似て
(大伴ヤキモチ)
注1)飛騨清見インターから次の白川郷インターまで約25km。名古屋から桑名くらいの距離になります。
注2)そこはきっちり雨なんですな、これが。