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経読む坊主

経読む坊主

2024年8月18日

先日祖母の30回忌がありました。

 

私の母は幼稚園の教諭をしていました。その当時としては珍しく女性ながらフルタイムで働いておりまして、私は完全な「お祖母ちゃん子」として育ちました。

祖母が好んで見ていたテレビ番組は時代劇で、「水戸黄門」「銭形平次」「暴れん坊将軍」「木枯し紋次郎」(注1)など、時代劇を寝物語に聞いて寝ると言う毎日でした。そりゃー痛快でしたよ。最後は必ず悪い奴が成敗されて眠りにつくんですからねぇ。勧善懲悪は道徳の基本ですから教育的に悪い話ではないと思うんですが、どうして時代劇はなくなっちゃったんですかねぇ。

 

そんな祖母が亡くなったのは私が大学6年生の時で、臨床実習のために直ぐには戻れずとても残念でした。それから今年で30年です。

すっかり年老いた母が30回忌を企画してくれましたので参加してきました。母は「お祖母ちゃんがアンタらの面倒を見てくれてたから仕事を続けられたのだから、定年まで仕事をするのが恩返しだ」と祖母が亡くなってからも仕事を続け、定年の少し前に多めの退職金をもらって引退しました。こう言う義理人情とゲンキンさのバランス感は祖母の流れですし、妹は鍵っ子になりながらもそれに耐えて刻苦勉励し国立大学に入りましたから大したモンで、逆境を与えられた条件に過ぎないと割り切ってその条件の中で最良の結果を出すと言う足腰の強さもまた祖母の流れかと思いますね。今や地元の名士となった姉も含めて、ジャンヌダルクと北条政子とエリザベス1世に囲まれた家庭で育ってしまえば私がヘタレになるのも当然です。私がヘタレなのは私の責任ではありません。

 

場所は桑名の下町で、昔住んでいた地域の小さなお寺さんでした。時折桑名に行くことがあっても用があるのは駅前ですから、そこまで奥深く桑名に入り込むのは40年ぶりでした。昔遊んだ友達の家を訪ねてみましたが、そのままのところもあるし、立派なお家に建て替わっているところもあるし、家はそのままで表札の苗字が変わっているところもあるし、家はあるけどボロボロの空き家ってところもあるし、いろいろでした。

ヘタレを絵に描いたような私がそれなりに生きているんですから、みんな逞しく生きていることでしょう。

 

法事には甥や姪も来てくれました。祖母が亡くなったのは私が大学生の頃ですから祖母を知っているはずはないんですが、神妙な面持ちで参加してくれてました。そこはさすがジャンヌダルクの子供たちというべきでしょうね。

それにしても、読経ってのはどうしてあんなに長いんでしょうな。あの独特の節回しの解読不能な日本語は何とかならんもんなんですかねぇ。「あっしには関わり合いのねぇこって」と言い捨てて出て行く紋次郎の姿を真似してみたくなりましたが、そこはさすがに我慢しました。

ヘタレにはヘタレの生き方がありますからね。

 

♪ この時の 早く過ぎよと 若人の 眼は虚なり 経読む坊主

 

注1)多くの時代劇は夜8時~だったのですが、「木枯し紋次郎」は深夜22時からの放送で、夜更かしと紋次郎のニヒルな生き方が相まって背徳感にゾクゾクしましたな。

 

桑名市東矢田の教覚寺さん。本堂のご本尊です。  

法事の後はみんなで鰻でした。美味でした。

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