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師や如何に見ん

師や如何に見ん

2023年12月30日

先日、大学院生の頃に所属していた研究グループの忘年会があり、久しぶりに参加してきました。

 

私の研究グループは「脳血管内治療」と言うグループで、血管の中にカテーテルと言う細い管を進ませ、脳の病気を血管の中から治療しようと言う技術の研究です(注1)。今となっては普遍的な治療なのですが、その当時はまだその技術を持った人が少なく、かなり忙しかったです。

 

大学院生は学生ですからお給料がありません。このため生きるためにアルバイトをしなければなりません。私の場合は既に脳神経外科の専門医でしたのでそれなりに実入のいいアルバイトではあるのですが、そこはアルバイトですから身分の保証があるわけではありません。体一つが資本の不安定な状態で、怪我や病気で仕事に行けなくなれば飢え死にです。医療ドラマなんかで「仕事と体とどっちが大事ですか?」なんて言う場面がありますが、仕事に行けなきゃどっちみち飢え死になんですから悩む余地はなく、「仕事に決まっとるがや!」と言わざるを得ないっちゅー話であって、無理に無理を重ねてお仕事に邁進される悲しいお立場がよく理解できるようになったのは良かったと思っています。体は体だけそこにあっても1円にもなりません(注2)から、愛する家族の幸せを守るためには…と、どうしても考えちゃいますよね(注3)

 

あまりの忙しさにブー垂れていた所、「普通の人にはない技術を身につけるのに普通の人より苦労をするのはアタリマエじゃない?」とアタリマエの指摘をして下さったのがお師匠でした。で、その時から心を入れ替え、貰える苦労は素直に貰っとくことにしました。「待てば海路の日和あり」「果報は寝て待て」「棚からぼた餅」を生き方3原則としてのんべんだらりと生きている私ですが、こりゃまた苦いぼた餅なぁって事で(^^;

 

今となっては培った手術の技術を行使することも稀となり(注4)、後輩たちの活躍を眩しく見上げる立ち位置なのですが、それでも彼らが先輩として立ててくれるのはありがたいです。「♪なごーやだいがくけっかんなーいきんむ、月月火水木金金!」なんて歌いながら共に苦難を乗り越えた絆ですね。こう言うゆる〜い師弟関係が実に心地良く、名古屋大学脳神経外科血管内グループに所属できたことは私の一世一代の幸運だと思っています。

 

昨今の若者には何かと評判の悪い忘年会ですが、そこから何も引き出せないのは自らの不明であって、年1回くらいは飲み会があってもいいんじゃないでしょうかね。

 

では皆さん、良いお年をお迎えください。

 

♪ 今の我 師や如何に見ん 白と黒 相半ばして 髪も心も

 

(大伴ヤキモチ)

 

注1)これだと頭蓋骨をカチ割ることも脳に直接触れることもなく病気が治療できると言うスンポーですね。

注2)経験的には男のプライドが最もカネになりませんな。邪魔なばかりで。

注3)であるからして血圧・コレステロールなどの健康管理と十分な休息は極めて重要で、 心身の健康には気を付けましょうね。お互いに。

注4)今でも(水)の午後は手術のお手伝いをさせてもらってますけどね。

 

師匠の愛知医大教授、後輩の名大准教授・名大助教の各先生と共に(許可を得て掲載しています)。

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