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光るこの春

光るこの春

2023年4月16日

今年の桜は早かったですね。

桜が咲くには冬の寒さが必要なのだそうで(注1)、暖かくて冬の寒さが緩い南九州などでは却って開花が遅い傾向があるんだそうです。「麦は踏まれて強くなる」と言いますが、「桜は凍えて花が咲く」と言った感じでしょうか。

ですがまあ、麦だって踏まれずに強くなれるのならそれに越したことはないですし、桜だってアラスカとかシベリアとかの極寒の地には生えられない訳ですから凍えて枯れては本末転倒で、あまり「耐えてこそ花が咲くんだ」的な話を美化して語る大人はスマートじゃないです。「若い頃の苦労は買ってでもしろ」とか言いますが、そんなもん普通は買ってまではやれんでしょ。こう言う厚顔無恥なことを平然と言う大人は「オマエは買ったんかっ!」と後ろからハリセンで頭ドツイてやりたくなりますな。貰えるもんは貰っとくか…くらいの緩〜い姿勢で良いんじゃないでしょうかね。

同じような意味合いにおいて、私の理解が少し及ばないのは「置かれた場所で咲きなさい」と言う言葉です。花本人が言うのならともかく、若人が大輪の花となるように場所を選んであげるのが大人のやるべきことでしょ。そう言った配慮をせずにそんなことを言うのは大人としての役割のサボタージュであって無責任に感じてしまいますが、どうなんでしょうね。「孟母三遷(注2)」と言う言葉の方が私的にはしっくりきますね。

 

さて、そんな風に手塩にかけて育てられた大輪のお花を今年も頂きました。昔々、私が病院の脳外科部長でありました頃に治療に携わった老紳士とその娘さんが毎年開院記念日に合わせて送ってくださるんです。

今年も受付に飾らせていただきました。ありがとうございました(^^)

 

人が花を愛でる歴史はよく分かっていないようなのですが、現生人類より進化的に若干下層にあたるネアンデルタール人は既に死者に花を手向ける文化を持っていたんですって。とすると花を愛でる心は「価値観」と言われるような表面的なものではなく、文化と呼ぶ以前の根源的な人の性質なのかもしれませんね。

脳が感じる幸せ感はセロトニン、オキシトシン、ドーパミンと言う3つの脳内ホルモンによって形成され、大雑把に言ってセロトニンは安らぎの幸せ、オキシトシンは絆の幸せ、ドーパミンは獲得の幸せを司るとされています。老子は「馳騁畋獵令人心發狂(競い合うと人の心は狂う)」と言ってドーパミン的な幸せを求めることの危険さを指摘しましたし、オキシトシン的な幸せはともすれば排他的な攻撃性を生み出します。

セロトニン的な安らぎの幸せこそ人の幸せの本質で、だからこそ花を愛でる心は原初の人類から受け継がれてきた人の心なのかもしれませんね。

 

確かにお花って心が和みますよね。

しばらく受付が華やかでとても嬉しいです。

 

♪空青し 匂うは花や また君や 今年も来ぬる 光るこの春

(大伴ヤキモチ)

 

注1)「休眠打破」と言うんですって。

注2)儒教で孔子に次ぐ偉人とされる孟子が、幼少時にお母さまが教育環境を整えるために3回も引っ越ししたと言う伝説から「教育には環境が大事」と言う教えです。

 

心癒されますね、やっぱり。

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