今年は大変な1年でしたね。
昨年の今頃はこんな1年になるとはとても想像できませんでした。このコロナ禍の2020年は人類史に刻まれる年になるでしょうね。
新型コロナウイルス感染症の拡大と言う具体的な問題だけでなく、ホモ・サピエンスと言うサルは不安定な状況に陥るといかに他者に対して攻撃性を発揮するかと言うどす黒い部分を見せつけられた非常に暗い1年ではありましたが、それでも、それと同じだけ人と言うものの強さ、優しさ、逞しさに感心させられることも多く(注1)、それはそれで良い1年であったと思いたいです。
もし明後日地球が滅ぶとしたら…と想像して、明日やりたいことが今自分が一番やりたいことで、その日の夕食に食べたいものが自分の一番の好きな食べ物だと言う話を聞いたことがあるんですが、私は夕暮れまで1人静かに弓道をして、夕日が落ちるのを1人静かに見届けたあと、夕食には茹でたての越前ガニが食べたいです(注2)。
私はザ・庶民ですので(注3)、若き日にカニなどと言う高級食材を食す機会は全くありませんでしたし、大人になってから多少食べる機会があったとしても、「美味しいことは美味しいけど、値段と手間を考えるとねぇ…」とちょっと否定的でした。が、当院を開院する直前、福井県に行く用があった際に、万が一医院経営が破綻し自己破産した場合に備えて、この世の名残にと思い切って茹でたての越前ガニを食べに行くことにしました。
で、それ以来越前ガニの虜になってしまいました。
そんな訳で、例年ですとこの季節は福井県まで越前ガニを食べに出かけるのですが、今シーズンは、新型コロナウイルスの感染爆発地域である名古屋市の住民が食い道楽のために県境を大きく超えて出かける訳にもいかず、断念することとしました。
これでは死んでも死にきれんわいと近々に地球が滅びないよう祈る日々が続いておりましたところ、本日、ひょんなことから越前より蟹がやって参りました。なんでも、今年はgotoトラベル政策の影響で蟹が品薄で大変らしいです。持つべきものは良き友(注4)ですな。
いや〜美味なり美味なり。
余は満足じゃ〜、と言いたいところですが、やはり現地での茹でたてには若干敵わないような気もしました。
と言う訳で、できれば地球が滅ぶのは来年の冬以降でお願いしたいと祈るこの年の瀬です。
みなさま、良いお年をお迎えください。
♪ 病避け 冬の味覚を 追えぬ冬 蟹の来たりて 巣籠もり嬉し
(大伴ヤキモチ)
(注1)2020.5.5付「膳を我が家に」、2020.5.20付「人と人」の項もご参照ください。
(注2)茹でたての越前ガニに出会うまではタコ焼きでした。
(注3)2020.6.14付「沢瀉の」の項もご参照ください。
(注4)吉田兼好さんによると、良い友達は「物くるる友」「医師」「知恵ある友」の3つだそうですよ(徒然草#117)。私は医師ですから「医師」の友はたくさんいますし、私を基準にすれば友人はほぼ全員「知恵ある友」ですが、「物をくれる友」はなかなかいないですねぇ。