先日、(土)の診療中に携帯電話に着信がありました。
私は、外科医である特性上、緊急の手術依頼などもあるため、診療中も携帯電話を持っているんですが、そこはその道の者同士ですから、明らかにこちらが診療中と分かってる時間に直電してくるなんてことは滅多にありません。もしあるとすれば余程緊急のことと思われますので、かなりギョッとしました。
が、表示されている08で始まる電話番号に見覚えがありません。神戸が078、福岡が092ですから、その間くらいの中国地方になるのは想像できるのですが、さすがにそんな遠くから手術依頼があるとは思えません。??と思いながら恐る恐る電話に出てみますと、相手は島根県の振興財団の方でした。私が以前投稿した短歌が入選になったとの事で、表彰式に出席できるか?とのお話でした。うーん…と記憶をまさぐると、そう言えば、かなり前に短歌募集のページでポチッと送信ボタンをクリックした記憶が蘇ってきました。
短歌。これ高校生の頃からの私の古い趣味なんです。
国語の教科書に載っていた
♪石走る 垂水の上の さわらびの 萌え出づる春に なりにけるかも(志貴皇子)
♪東(ひむがし)の 野に炎(かぎろひ)の 立つ見えて かへり見すれば 月傾きぬ(柿本人麻呂)
と言う2つの万葉集の和歌に強烈な衝撃を受けて以来のことです。
和歌を読んだ瞬間、灰色の岩の上を白く泡立つ水が流れその傍に緑色の蕨が小さく頭をもたげている美しい風景、そして、東の地平線が朝焼けで茜色に染まり、西の地平線には藍色の空が繋がり月が隠れようとしているという雄大な景色が、ぶわーっと頭の中に広がりました。ほんの31音の定型文が、これほどまでに色鮮やかな心象風景を呼び起こすと言うことに感動してしまい、それ以来、何かにつけて少し心が動いた時に、三十一文字(みそひともじ)を捻り出しています。
そんな訳ですから私の短歌は完全に我流です。あえて言うなら、万葉集が大好きなので大伴家持くん(注1)が師匠で、徒然草を何度も読み返しているので古文体は吉田兼好さん(注2)に教わったと言えるでしょうか。
とにかく我流ですから、誰に見せることもなく細々と続けていた趣味だったんですが、ある日、徒然なるままにネットサーフィンしていたところ、短歌募集のページを見つけ、応募してみた…と言った経緯です。
表彰式には診療の都合がつかず出席できませんでしたが、後日、ご丁寧にも賞品として島根県の特産品詰め合わせをご郵送頂きました。素直に嬉しいです。
何事もやってみるもんですね〜(^^)
島根県は僕の好きな旅行先の1つで、機会を見つけては行くところです。
また今度行こ〜っと。
♪何事も やってみるべし 入賞歌 腰折れ歌も 数打ちゃ当たる
(大伴ヤキモチ)
注1)奈良時代の人。万葉集は1割以上がこの人の歌で、ユーミン並みの人気歌手だったようです。私のペンネーム「大伴ヤキモチ」は彼の名にちなんだものです。
注2)鎌倉時代の人。随筆「徒然草」の作者として有名ですね。賢人として尊敬しています。