患者さんから油絵をいただきました。
私が海南病院の脳神経外科部長でありました頃に脳動脈瘤の手術を担当させていただいた方です。
私は自他ともに認める超理系脳の人間で、趣味の弓道でも、「弓」という線形弾性体に加えられたフックの法則f=kxの力で、ニュートンの運動第3法則を応用し射出される「矢」という羽毛が生み出すジャイロ力で直進性を得た棒状の物体を、「的」と言う円形の物理体へ的中させる競技であり、重力加速度g=GM/r2の影響を受ける…としか把握できず、武道と言う神聖性が全く理解できないため、体配と呼ばれる問答無用のしきたりが、カマキリが静止しているものが見えないように、私の頭には全く入らないという質の人間です(危険性の排除と言う意味でのルールはすんなり理解できるんですけどね)。このため、書画骨董から音楽に至るまで芸術と呼ばれるものが全く理解できない自覚があり、一瞬身構えたのですが、箱を開いてみると私のような理系脳でもすんなりと理解できる素敵な絵でした。
書画骨董と呼ばれるものって、書なら何て書いてあるか分からない文字を、画なら何が描いてあるのか分からない絵を、骨董ならその使用の合理性が分からない物を良しとする様な印象があって、私には芸術性というものがよく分からないんです。鑑賞のポイントやうんちくを教えていただいても、なんだか小難しいことをおっしゃっている様にしか聞こえず、ワインを美味しく飲んでる時にそのワインの講釈を聞かされる様な感覚に似て、理解できない自分に劣等感を感じていたたまれない気持ちになっちゃうんです。でも、そこはお互いの人生をぶつけあわせるように共に病気と向き合い、以後長いお付き合いのある患者さんですので、そこを見越して理系脳の私でも素直に分かる絵を選んで下さったんだなあととてもありがたく思いました。
早速クリニックの壁に飾ってスタッフみんなで眺めて記念写真を撮りました。白い無機質な壁に心の窓が開いて、別の世界が見える様な感じがしました。
今日もなんとなく眺めてしまいました。心が洗われる様な気持ちになります(^^)
♪良き絵をば 飾りて眺む 薄暗き 壁の奥にぞ 野の開くなる
(大伴ヤキモチ)