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野を拓きつつ

野を拓きつつ

2018年10月21日

先日、少しお休みををいただき、認知症学会に行ってきました。
場所は札幌です。
寒いかな〜と心配していたのですが、比較的穏やかな気候でそれほど寒いとは感じませんでした。よかったといえばよかったんですが、少し紅葉には早かったので残念でもありました。
1ヶ月ほど前に地震で大規模停電が起きた後でしたが、特に学会の中止も延期も連絡がなかったので大丈夫なのかしらと心配していたのですが、学会の数日前に電車なども完全復旧したそうで、問題なく行ってこれました。
認知症学会には数年ぶりの参加でしたが大変勉強になりました。このような機会をいただきましたことを心から感謝いたします。

学会の合間に、少し足を伸ばして洞爺湖までドライブしてきました。
ドライブをしていると北海道の地名いろいろと目にします。多くの場合アイヌの言葉に漢字を当てたものなのですが、仙台の伊達氏に因んだ伊達市や、広島の方々が開拓した北広島市など、明治時代初期に開拓のために入植した人々の故郷にちなんだ地名も多く見られます。入植って言っても、それは本州側に住んでいた和人の言い分であって、この大地にはすでにアイヌの方々が生活していた訳で、そこに和人が入植するということは、アイヌ人にとっては生活の場に乱入してきた異分子であった訳です。札幌駅に飾られていたアイヌ人を模した木像は弓を持っていたのですが、弓を持つということは狩猟を行なっていたと考えられますので、その弓を侵入者である和人に向けなかったアイヌの人達の心の優しさになんだか感動してしまいました。生きるために新しい故郷と希望を求めてやってきた和人と、本当は生活の場を守りたかったであろうアイヌ人との融和(注1)が北海道全体に漂う柔らかい空気感なのだろうかなと思いました。
札幌の時計台は小さくて興ざめだなんて言ってるうちはまだ本質が見えていないでしょう。あんなにちっぽけな時計台が北海道を拓いた人たちにとって心の拠り所となるくらいにかつての北海道は原野だったのでしょう。そんな原野を生きるために必死に開拓する…逆の立場から見れば自分たちの生活の場である原野を破壊する行為であるわけですが、そんな入植者を迎え入れてくれたアイヌの人達には畏敬の念を抱かざるを得ません。
かつて蝦夷地と呼ばれたこの大地を「北海道」と名付けたのは松浦武四郎と言う方で、限りなくアイヌ人とアイヌ文化を愛していたと言います。北海道の「海」は武四郎さんは「加伊」と字を当てています。「カイ」とはアイヌ語でアイヌ人自身のことだとも自分たちの暮らす大地のことだとも言われますが、おそらく現在の日本人が自分たちの国を「ニッポン」と呼ぶような語感の言葉だったのかと思われます。
松浦武四郎は三重県(伊勢国)の人で、私とは同郷です。僕の大好きな歴史上の人物の1人でもあります。

さて洞爺湖です。
素晴らしく透明度の高い水でとても幻想的な雰囲気でした。10年ほど前に先進国首脳会議が開かれた山の中腹にあるホテルから眺めますと、実に美しく青く輝いていました。本当に綺麗でした。
G8のリーダーたちもこの景色を眺めたのだから、もう少し優しい世界を作って欲しいところなのですが…
今のところ少し残念です…かね。

♪洞爺湖は 碧き宝玉 いにしえの 人も見たるか 野を拓きつつ
(大伴ヤキモチ)

(注1)松前藩や明治初期の和人がアイヌの人たちにひどいことをしたことは把握していますので、そこは責めないでくださいm(_ _)m。北米や南アのような明らかに暴力的な抗争はなかったと言う意味です。

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